「気づき」を促す文法指導~Consciousness Raising Taskのススメ

「気づき」を促す文法指導~Consciousness Raising Taskのススメ

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この記事では、教えたことをしっかりと定着させるための一つの解決策となり得る案として、第2言語学習得理論の最先端の教授法の内の1つのである、Consciousness Raising Taskを紹介します。

このアクティビティは特に文法指導に効果的となっているので、新しい文法の教え方を試してみたいという先生にオススメです。

目次
1.Consciousness Raising Taskとは?
2.Consciousness Raising Taskとはどういった側面で有効なのか?
3.Consciousness Raising Taskの具体的な例

Consciousness Raising Taskとは?

Consciousness Raising Task(以下CRT)とは、見ての通り3つの単語から成り立っています。一つずつ見てみると

Consciousness = 意識
Raising = 向上
Task = タスク

という意味になります。
つまり、そのまま日本語にすると「意識向上タスク」という意味になります。
日本語からも分かるように「何かの意識を上げるタスク」です。
日本語では「意識化指導」などとも呼ばれます。

CRTの定義ですが、

“a pedagogic activity where the learners are provided with L2 data in some form and required to perform some operation on or with it, the purpose of which is to arrive at an explicit understanding of some linguistic properties of the target language.” (*1)

「学習者に何かしらの形式の第二言語の情報が提供され、それ自体もしくはそれを用いて何かしらの操作が求められる教育学的なアクティビティ。そして、その目的は目標言語の言語的特性の明示的な理解に辿り着くことである」

とされています。簡単に言ってしまうと

1.生徒に教えたいこと(文法など)の文章等を提供する
2.それを生徒が何かしらの形で使う
3.生徒はそれについてしっかりと理解することが求められる

という3つのポイントになります。

そして以下の5つの要素が含まれています。

1.There is an attempt to isolate a specific linguistic feature for focused attention.

2.The learners are provided with data which illustrate the targeted feature and they may also be supplied with an explicit rule describing or explaining the feature.

3.The learners are expected to utilise intellectual effort to understand the targeted feature.

4.Misunderstanding or incomplete understanding of the grammatical structure by the learners leads to clarification in the form of further data and description or explanation.

5.Learners may be required (although this is not obligatory) to articulate the rule describing the grammatical structure. (*2)

1.特定の文法事項に注目があたるようにする

2.今日はこういう文法をやりますと渡して、それに対して先生は説明する

3.頭を使って文法を理解する

4.学習者が「どういうこと?」とあまり理解していないようだったら他の例文や説明をして理解を促す

5.学習者は文法構造のルールについて説明することもある

これら5つの要素が揃っているのがCRTの重要な点ということです。定義とポイントをまとめると、CRTは、

「文法事項の気付き→その知識の理解→使えるようになるための練習がある」

という3つのステップが根幹になっていることがわかります。

簡単にここでまとめておきましょう。

1.CRTとは気付きを促し、言語的な知識の獲得を目指すアクティビティー
2.特に文法指導に有効
3.CRTには5つの要素がある
4.CRTは、気付き→理解→練習

それでは次にこのアプローチがどういった理論が基礎となっているのかを見ていきます。

Consciousness Raising Taskとはどういった側面で有効なのか?

CRTは、最初に述べた通り、第二言語学習得理論の最新の研究に基づいて作られたアクティビティーの一つです。
ここではどういった観点から作られた指導法かについて、概念的な理解をしていきます。
大きく分けて「気付き」と「明示的知識」の2つの側面があります。
それらをそれぞれ説明していきます。

気付き―Noticing―

CRTはConsciousnessが示す通り「気づき」を促します。
「気付き」とはその名の通り「何かに気付くことです」。
例えば、「あれ、もしかしたらa/theの違いは、〇〇かもしれない」という、知識の芽生えの段階とも言えます。

第二言語学習得理論ではこの「気付き」はとても重要な役割をしており、「気付きがなければ学びはない」というスタンスが一般的になっています(*3)。
ただ「説明するだけ」では気づきにつながらず、定着することにはつながらないかもしれないということです。

CRTは、そうした「右から左へ」抜けてしまう指導ではなく、生徒自ら頭を使って、今目の前にある言語がどのような構造なのか、どのようなルールなのか、どのようなときに使うのか、などを積極的に考えることによって、気付きにつながり、その結果記憶によりよく定着し英語力が伸びることに繋がります。

明示的知識―Explicit Knowledge―

CRTは明示的知識の醸成に繋がります。
明示的知識とは大雑把に言えば「自分が持っているのを知っている知識」のことです。
例えば、「私はaとtheの違いの一つは名詞が特定であるかどうかだ」という知識になります。
その特徴としては、

1.ルールを説明できる
2.自分でその知識を持っていることを知っている。

という2つになります。

第2言語学習得理論において、Explicit Knowledgeの重要性を説明している具体的な理論としては、Skill Acquisition Theory「スキル獲得理論」(*4)があります。

この理論は細かい点を抜かして言うと、何かを学ぶときには、Explicit Knowledgeから始まり、それを使えるようになるようにスピーキングやライティングなどの「練習(Practice)」を通し、最終的にそのスキルをマスターする(自動化 Automatization)、という順序を踏むとしています。

つまり、外国語を学習する時には、意図的に明示的な知識を付け、それを使えるように練習することが大切だということです。
CRTはでは、気付きに加え「明示的な知識」を獲得し、練習をする機会を提供するためスキル獲得理論の観点からも有効と言えます。

Consciousness Raising Taskの基本的な流れ

それではここからは、CRTとはどのようにクラスで行われるのかを見ていきます。
まずは基本的なステップを確認していきます。
このステップはMiranda et al. (2018)(*5)を参考にしております。

ステップ1: 文法の気付き―Discovering the grammar―

ここではターゲットとなる文法事項を使った文章を含んだいくつかのセンテンスを生徒に示し、どのような文法の機能があるのか考えさせる機会を与えます。
ここではただ単純に文法を説明するのではなく、生徒に考えさせ「あ、こういうことかな?」という気付きを促すことが目的です。

ステップ2:文法について学ぶ―Learning more about the grammar―

ここではより正確な知識を学ぶために文法についての明示的な説明をします。
ここででは「あ、こういうことかな?」と思った状態で、「あ、なるほど!そういうことか!」という一種のAha体験を促します。
そうすることで、文法知識をより深く理解することに繋がります。

ステップ3:文法の探求―Exploring the grammar―

次のステップは文法を実際に使うステップになります。
文法についてのしっかりした理解をした後に何かしらのアクティビティを通して練習をすることで、知識を「使える知識」にすることを促します。
ここでのアクティビティは、自由に文法項目をスピーキングやライティングで使うというよりは、ターゲットの文法項目を使った文法問題などのコントロールエクササイズになります。

ステップ4:文法で遊ぶ―Playing with the grammar―

次のステップは、実際にターゲットの文法事項を使って、自由にセンテンスを作るアクティビティーをします。
自分のアイディアを使い文法を学ぶため、より広い概念的知識を得ることが出来ます。

ステップ5:文法を探す―Finding the grammar―

このステップでは、生徒がセンテンスの分析をして、その中に含まれている文法のミスを直すアクティビティーをします。
このアクティビティーによって、学生が自主的に自分の既存の知識と、今学んでいる新しい知識を使用し、積極的に知的活動をおこなうため、目的の文法に対しての知識を深めることが出来ます。
ステップ3の後に行っても大丈夫です。

ここまでのまとめ

CRTにはいくつかのステップがあります。それらのステップは、

(1) Discovering the grammar
(2) Learning more about the grammar
(3) Exploring the grammar
(4) Playing with the grammar
(5) Finding the grammar

の5つとなります。

CRTの実際の例

さて、今まで、CRTの定義、学術的な意味合い、そしてステップを見ていきました。
ここでは実際の具体例を見ていきましょう。

レッスンについて

まずここでは、レッスンの概要を見ていきます。
今回は「冠詞」を教える授業というのを想定しています。

レッスンの目的:

1.冠詞(a/the, zero article)の知識を深め、拡大する
2.冠詞をスピーキング、ライティングにおいて意識をして使う
3.冠詞を用いてなにかについてのストーリーを話す

ステップ1:Discovering the grammar

ここの目的は、「文法事項が何か」を見つけ、プライミング効果(〇〇を勉強するのか、と脳をReadyな状態にさせること。
そうすることで、知識が入ってきやすい)を向上させることです。以下にどのようなものかを例を載せます。

Warm UpのAでは、冠詞を使った文章がいくつかあります。
そして、冠詞に注目が行くように太字にしています。
そうすることで指示文では「以下の文章をじっくり読み、以下の質問に答えなさい」としております。
例文は、適当にランダムな文章を載せるのではなく、「ターゲットに沿った文章」を載せましょう。
そして、特に教えたい文法事項が如実に比較され際立っている文章がより、プライミング効果を上げることが出来ます。

そして BにはAの文章に対する質問がいくつかあります。
例えば、質問bでは「センテンス2では’water’に’the’が使われているが、センテンス3ではなぜ’coffee’には使われていないのか?」という質問をしています。

そのような、特に「文法事項の本質」をつく質問をすることが重要です。
上のwaterとcoffeeのものでは、冠詞の本質の一つである「特定性」が強調されているものになります。

生徒の中には’the’をつけるのは、2回目に出てきたもの、もしくは、不可算名詞には冠詞はつかない、という表面的な知識を持っている可能性があるため、今回の’water’のように、「文脈によって不可算名詞でも特性性を持つことがある」ことに対する、ある種の疑問をもたせることができます。
「どうしてだろう?」という疑問が後の「あーなるほど!」という、知識の落ち込みに繋がります。

Learning more about the grammarの例

次のステップでは文法事項についてより深く学ぶ場面になります。ここでは「正しい知識に辿り着く」ことが目的ですので、明示的に教えることも可能ですし、暗示的に教えることも可能です。
今回は、明示的な冠詞のルールの提示で用意しています。

Learning more about the grammar

ここでは、冠詞の使い方をはっきりと示すために、コアとなるルール(イメージ)を左の列に、そして右の行には感覚を掴むために例文をいくつか用意しています(あくまでも例のため、a, zero articleについては飛ばしております)。

例えば、上から4つ目のtheのルールは国名とあります。
生徒の中には「国は固有名詞だから冠詞はつかない」と思っている人もいる可能性がありますが、実際はそうではなく、「いくつかの州(the United Kingdomなど)、島々から成り立つ国 (the Philippinesなど)にはtheが付く」というルールをここでは示しています。

とくに冠詞のような「細かい」文法事項については、表面的なルールには気付きに至ることはあっても、深い知識には長年勉強をしていても、気付かないという場合が多々あります。
そのため、このように明示的に示すことで、そのギャップを埋めることに繋がります。

Finding the grammarの例

上のステップではこのステップは最後になっていましたが、今回は3つめのステップにしています。このアクティビティーの目的は既存の知識、そして新しい知識を使って間違いを見るけることです。以下に例を載せます。

Finding the grammar

今回は文章の中に下線部を引き、文法的に間違っているものに丸を付けてそれを正しい形に直すというアクティビティーにしています。

もし可能ならば、ただ答えさせるだけではなく、「生徒になぜその答えになるのか」を実際に口に出させ説明させるようにするのがおすすめです。
そのため、数分個人で回答をした後、ペアかグループに分け、ルールを説明させるようにしてみましょう。
自分で伝えることは、自分の知識を強固することに繋がります。

例えば1番の

“Wow. Look at (1) a price of (2) the cheese. It’s getting more expensive.”

という文章では、(1)の’a price’が文法的に間違っています。正しくは’the price’になります。
なぜなら、この状況は「(スーパーなどで買い物の最中に)話し手が聞き手に対して「共通の認識を持つ特定のチーズの値段」を指しているためです。
そうした説明を生徒間で行うことで、より知識の定着に繋がるでしょう。

Exploring the grammarとPlaying with the grammarの例

実際に生徒がグラマーを用いて文章を作る段階になります。
Exploring the grammarとPlaying with the grammarは別々のアクティビティでも良いですが、今回は「自分の好きな映画、本、もしくはオリジナルの創作の物語のあらすじを書きそれを他の人とシェアする」というアクティビティにしているので、「書く」作業と「話す」作業が一緒になっているアクティビティになっているため、2つのステップを併せ持つステップとして扱っています。以下がその例になります。

Exploring the grammarとPlaying with the grammar

ここでは最初に自分の好きな映画や本などのタイトル、ジャンル、名前を書きます。
その後下の四角の空欄に、物語のあらすじを書くという設定にしています。
その後は、そのあらすじについての説明をする、という流れになっています。
アクティビティの間では、先生が特に冠詞の使用について着目をして、それについてのフィードバックを必要であれば適宜行っていきます。

CRTの例のまとめ

これらのアクティビティを通すことで、気付き→理解→練習というサイクルを効率良く行うことが出来ます。
もちろんこの記事で提示した例はあくまでも一つの例であるため、5つのステップ、気付き→理解→練習のサイクルを意識することで、幅広く応用することが出来ます。

Consciousness Raising Task (CRT) 指導法まとめ

Consciousness Raising Task (CRT)は「気付き」を促すアクティビティーのことです。
これを通し、知識を深めることに繋がります。ただ説明するだけではなかなか知識には定着はしにくいものです。
CRTを通して深い知識を付ける授業にしてみましょう!

参考文献

(*1) Ellis, R. (1991). Second Language Acquisition and Language Pedagogy. Clevedon, UK: Multilingual Matters

(*2) Ellis, R. (2002a). Grammar Teaching – Practice or Consciousness-Raising? In J. Richards & W. Renandya (Eds.), Methodology in Language Teaching: An Anthology of Current Practice (Cambridge Professional Learning, pp. 167-174). Cambridge: Cambridge University Press. doi:10.1017/CBO9780511667190.023

(*3) Schmidt, R. W. (1990). The role of consciousness in second language learning1. Applied linguistics, 11(2), 129-158. https://doi.org/10.1093/applin/11.2.129

(*4) DeKeyser, R. (2007). Skill acquisition theory. In B. VanPatten & J. Wiliams (Eds.), Theories in second language acquisition (pp. 97–113). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum. doi: 10.4304/tpls.4.9.1971-1976

(*5) Miranda, S. J. P., Fallas, Q. E., Blanco, R. M., Salas, B. D., Alfaro, M. L. D., & Vásquez, V. J. M. (2018). Consciousness raising tasks for the learning of grammar in high school English language classrooms. Actualidades Investigativas en Educación, 18(3), 88-115. https://doi.org/10.15517/aie.v18i3.34330

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